目指す洞窟はカルサアの町からそう遠くはない。

 先陣きって走るネルは陽の光が反射する波が打ち寄せる岸壁にその洞窟を見つけた。

 

「噂には聞いていたけれど、ここまで近いとはね……」

「なんだ? 来たことなかったのか」

「ああ。洞窟に来る用事はないからね」

 

 アーリグリフ領内で何か事件が起こればまずは三軍に仕事がまわる。仕事はクリムゾンブレイドとして、シーハーツ側になるネルに実際アーリグリフ領内での仕事はまわらない。

 それに遊び場にもならない。

 

「そうですか。ネルさんが内部を知らないとなるとイーグルから取ってきた地図を頼りにするしかないですね」

「そんなもの取ってきてたのかよミラージュ」

「念には念を、です」

 

 用意周到なミラージュ。だが、ここには実際に内部を見てきたやつがいる。元の姿に戻っているアルベルsドラゴンだ。

 

「地図がなくてもティフェレトがいるんだ。 アルベルのところまで連れて行ってくれるだろう?」

『あたりまえだ』

「よし、道案内は頼むわ」

 

 3人と一頭は海岸洞窟へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 光の届かない暗い洞窟をネルの使う光の施術で視界を確保しながら進む。この程度の施術であるならば他の施術を行使しながらでも保つことができる。

 

「おまえ、封魔師団『闇』の部隊長じゃなかったか?」

「こんなもの施術を使える者なら誰でもできるよ」

 あいつだって例外じゃないよ。

 

 クリフのたわいない質問に答えるネル。

 会話自体がこのくらいで、すぐに静寂が場を支配する。

 あるのは水が滴り流れる音だけだ。

 

『さっきよりも静かだな』

「どういうことだい?」

『主と来た時は魔物が襲い掛かってきた』

 

 ほとんどが水棲や炎を弱点とする魔物だ、とティフェレト。

 

「大方地下水路に出てきた蛙とか、モーゼルに行く時にいたアクアレジア程度じゃねえのか?」

 

 エクスキューショナーに汚染される前のエリクールならそれで済む。だが、ティフェレトが言った言葉でクリフが固まった。

 

『茶色の毛玉と白いアクアレジアだ』

「ああ、サンダーストラックを使ってくるアレですね」

 

 FD世界で見ましたね、ミラージュがあっさりとティフェレトに返す。

 

『主は簡単に倒していたが…まずい魔物だったか?』

「まあ、それなりに」

 

 ネルとクリフは言葉もない。

 

 だが、

 

「来たよ!」

 

 流水の中から現れたアクアレジア(白)をネルはデスブリンガーであっさりと両断する。しかし手ごたえはなかった。

 アクアレジアは二つになったまま霧となって散った。

 

「どうしましたか?」

「斬ったのに手ごたえがなかったんだよ」

 まるで、ほろぐらむってやつに触った時みたいにね。

 

「クリフ、これは」

「ああ、おそらく俺たちが考えている通りだ」

「?」

 

 

「ルシファーが残した不完全なプログラムだ。

 実体がないな」

 

 エリクールのような未開惑星ならば多少現実にそぐわないことがあっても心霊現象で済まされるだろう、と。

 

「そんな場所であいつがどんなことに巻き込まれたかは知らねえが……」

 さっさと助けてやらねえとマズイことになるぜ。

「そんなこと言われなくてもわかっているよ」

 

 ネルは水滴のついたデスブリンガーを払った。

 

 

 

 

 

 アクアレジアやら毛玉やらを倒しつつ――どれもこれも霧散していった――ティフェレトの案内の元アルベルの消えた地点へと洞窟を進んでいく。

 

「ちょっと待ってください。地図上ではこの先があの霧がかっている地点です」

 

 実際にはなにもぼやけたりしていないが、ミラージュがイーグルから持ってきた地図と照らし合わせている。

 

「別に妙な施力を感じるってわけでもないよ」

 見える施力も普通だ。

 

 ためしに施術を使用してみるが発動しないなどの異常は見られない。

 

「?!」

「どうした、ネル」

「あいつの、アルベルの施力だ」

 

 ためらうことなくネルはティフェレトを連れてミラージュが止めた地点より深くへと走っていく。

 

「おい待てよ!」

 

 慌ててクリフとミラージュもネルを追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは……」

 

 黒い霧の中、たたずむ人影……

 ネルはその人影にゆっくりと近づく。

 

「アル、ベル?」

『――主』

 

 ティフェレトにとっては目の前でダークサークルに飲み込まれた主人。

 だが、

 

「ネル! 様子がおかしいぞ」

「様子だけじゃなくて見た目もですよ」

 

 ミラージュの言うとおりアルベルの外見はカルサアを出て行ったときとは異なる。紫を基調としたそれが漆黒になっている。

 それよりも瞳の色

 

 

 

 

 

「蒼い……」

 

 

 

 

 


 アーリグリフ領、グラナ海岸洞窟より

 アルベル発見vvですが、ダークサークルのせいでおかしくなってます。蒼眼のアルベルなんてなに勝手にやってんですかって感じですね。ホントは2Pカラーで蒼眼にしようと思ったのだけどね。未開惑星でいきなりそこまで変わられても……なのでやめました。

 なにげミラージュさんとティフェレトのコンビが書いてて楽しかったです。

 

 20041113 

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